【最新版】身体拘束及び高齢者虐待防止に関する研修)法定研修)ー事例検討あり

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【最新版】身体拘束及び高齢者虐待防止に関する研修)法定研修)ー事例検討あり

皆さん、こんにちは。社会福祉士の石井雄樹です。

 このブログでは、介護や福祉に携わる方に向けて、「短時間で好きな時間に分かりやすく学べる」をモットーに、研修内容や明日から使える介護・福祉に関する知識をご紹介していきます。

  • 研修に使える資料がほしい
  • 研修のポイントを知りたい
  • パワーポイントに使える資料が欲しい
  • 勉強したいけど、時間や費用はかけたくない

 このブログを活用していただければ、勉強したいと思っている介護・福祉従事者の方はもちろん、研修を担当している方にとっても役立つ内容を得ることができます。

 今回の記事では、「身体拘束及び高齢者虐待防止に関する研修」の内容をご紹介していきます。

身体拘束について知ること

身体拘束廃止に向けた考え方を知ること

高齢者虐待が起こる要因の捉え方を考える

「身体拘束」「高齢者虐待」について、組織で共通認識を持つ重要性を知る

 このような内容で解説していきます。

身体拘束及び虐待防止に関する研修動画

身体拘束とは?

 身体拘束とは「本人の行動の自由を制限すること」です。

 『介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き』では、以下のように説明されています。

「身体的拘束等」とは、介護保険法に基づいた運営基準上、「身体的拘束その他入所者(利用者)の行動を制限する行為」であり、入所者(利用者)の「生命又は身体を保護するため、緊急やむを得ない場合を除き」行ってはならず、原則として禁止されている。

 身体拘束は、手足を縛ったり、つなぎ服を着せることだけではありません。

 ご本人の行動の自由を制限することが身体拘束に当たることを覚えておきましょう。

身体拘束が認められる場合

 運営基準上身体拘束が認められる場合の要件について解説します。

 身体拘束は当該入所者(利用者)又は他の入所者(利用者)等の生命又は身体を保護するための緊急やむを得ない場合に認められます。

 要件は以下の通りです。

  1. 切迫性利用者本人または他の利用者等の生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高い
  2. 非代替性身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がない
  3. 一時性身体拘束その他の行動制限が一時的なものである

 ただし、この要件に当てはまれば、身体拘束をしても良いということではありません

 安易に要件に当てはめる行為は、ご利用者の尊厳を著しく損なう行為となることを覚えておきましょう。

身体拘束3つのロック

 介護の現場で発生し得る「身体拘束」は、下記のような3つのロックがあります。

  1. フィジカルロック:利用者の体を物理的に制限する行為を指します
  2. ドラッグロック:薬を用いて利用者の行動を抑制する行為を指します
  3. スピーチロック:言葉を使って利用者の行動を制限する行為を指します

 これら3つのロックは、いずれも利用者の安全を理由に行われることが多いですが、その背景には職員側の業務負担や思考停止も関係しています。利用者の自由と尊厳を守るためには、まず拘束をしなくても良い方法を考えることが重要です。

身体拘束廃止・防止の対象となる具体的行為(例)

❶一人歩きしないように、車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。

❷転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。

❸自分で降りられないように、ベッドを綱(サイドレール)で囲む。

❹点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。

❺点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手装等をつける。

❻車いすやいすからずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型拘束帯や腰ベルト、車いすテーブルをつける。

❼立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるようないすを使用する。

❽脱衣やオムツはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。

❾他人への迷惑行為を防ぐために、ベッド等に体幹や四肢をひも等で縛る。

❿行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。

⓫自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。

身体拘束は、なぜなくならないのか?

 身体拘束がなくならない要因の一つとして「生命又は身体を保護するための緊急やむを得ない」という状況に、安易に当てはめてしまっている可能性が考えられます。

  • 転ぶと危ないから
  • 動くとケガをするから
  • 寝てくれないと大変だから
  • 病院でも拘束していたから
  • 人手が足りないから

 一見『仕方がない』と思えるものかもしれませんが、これらの状況すべてが『緊急やむを得ない場合』に当てはまるわけではありません

 私たちが大切にすべきは、『拘束しなくても安全を確保できる方法がないか』を常に考え、実践する姿勢です。利用者の尊厳を守りながら、現場の課題に取り組む意識を持ち続けましょう。

拘束は、問題解決の手段として適切か?

 私たちは「介護が困っている事を解決する一番簡単な方法は、介護を困らせるご利用者の行動をできないようにする(拘束)ことで良いのか?」ということを考えなければなりません。


「もし自分自身が拘束される立場だったら、どんな気持ちになるでしょうか?」
「自分の家族が同じ対応を受けたら、納得できるでしょうか?」

 拘束は短期的な解決策に過ぎず、長期的には利用者のQOL(生活の質)を低下させる可能性があります。

 介護の本質は、利用者の尊厳を守りながら、安心して生活できる環境を作ることです。拘束以外の選択肢を考えることが、私たち介護職員の使命ではないでしょうか。

 まずは、ご利用者の声や行動に耳を傾けていくことが重要ではないでしょうか。

考えてみようーこれって拘束?

 男性ご利用者A様のケース

 A様は、ご自分で歩くことができます。ある日、お部屋からご自分で歩いて出てきたところで、少しふらついてしまいました。すぐにご自分で手すりに掴まり転ぶことはありませんでしたが、それを目撃した介護士Bは、ひとりで歩かせるのは危険だと思い、すぐにセンサーマットが設置されました。

 その日から、センサーが鳴ると介護士が部屋まで駆けつけてきて、「すぐ来るので待っててください。」や「今、忙しいからベッドに居てください。」と言われるようになり、A様はご自分の意思で部屋から出ることができなくなり、次第に部屋から歩いて出ようという意欲もなくなっていきました。

 女性ご利用者C様のケース

 C様は、ご自分で車椅子を自走できますが、自宅に帰りたい気持ちから、フロアを出て他のフロアへ向かったり、他のご利用者のお部屋へ入っていったりします。  

 常にC様の行動を気にする必要があった介護士Dは、車椅子に鈴を付けることを提案し、許可されます。

 鈴を付けた日から、鈴が鳴ると職員が駆けつけ、元の場所に連れ戻すという対応になりました。職員は常に鈴の音を気にするようになり、C様は自分の思うようにならないことに苛立ち、口調が強くなっていきました。

 この2つの事例について、ぜひ事業所内で話し合ってみてください。

 これらの行為は、はっきりと『身体拘束』と定義されていないかもしれませんが、それが利用者の尊厳を損なう場合があります。

 皆さん自身やご家族がその立場に置かれたら、どのように感じるでしょうか?」

•「自分が動けない状況を強制されるとしたら?」

•「家族が同じ対応を受けたら、納得できるでしょうか?」

 私たちが日常的に行っている行為の中には、ご利用者の自由や尊厳を無意識のうちに制限してしまっているものがないか、立ち止まって考える必要があります。


 拘束と明確に定義されない行為であっても、その適切性を常に問い直し、利用者にとって最善のケアとは何かを考えることが重要です。

高齢者虐待とは

 高齢者虐待とは、養護者や施設職員による不適切な扱いにより、高齢者の権利や利益が侵害される状態を指します。

 この虐待は、高齢者の生命や健康、生活を著しく損なう可能性がある深刻な問題です。高齢者虐待には5つの主な類型があります。

  1. 身体的虐待
  2. ネグレクト
  3. 心理的虐待
  4. 経済的虐待
  5. 性的虐待

高齢者虐待の現状と要因

 高齢者虐待は、「相談・通報件数」「虐待判断件数」ともに増加傾向となっており、いずれも過去最高となっています。

 虐待が起こる要因としてあげられいるのは以下のとおりです。

  • 「教育・知識・介護技術等に関する問題」56.1%
  • 「職員のストレスや感情のコントロールの問題」23.0%
  • 「虐待を助長する組織風土や職員間の関係の悪さ、管理体制等」22.5%
  • 「倫理観や理念の欠如の問題」17.9%

教育・知識・介護技術等に関する問題

 高齢者虐待の要因として、最も大きな割合を占めているのは『教育・知識・介護技術等に関する問題』で、全体の50%を超えています。

 この数値は、私たちがどれだけ研修を重ねたり、知識を学んだりしても、それが現場で十分に活用されていない可能性を示しています。

 高齢者虐待防止の研修を定期的に実施している施設は多いと思います。

 それでも、『教育・知識・介護技術に関する問題』が虐待の要因の大部分を占めているという現実があります。なぜ研修を行っているのに、この問題が解決しないのでしょうか?次のような疑問が浮かびます。

  • 「研修内容が現場の実情に合っていないのではないか?」
  • 「学んだ知識を現場でどう活かすか、具体的な支援や仕組みが足りていないのではないか?」
  • 「職員間でのコミュニケーション不足が、学んだ内容を共有できない原因になっているのではないか?」

 これらの課題を解決するには、単に研修を行うだけでなく、現場での実践を支援する仕組みを作ることが重要です。

 職員同士のコミュニケーションを深め、問題を共有し、適切な解決策を模索する文化を育てる必要があります。

考えてみようーこれをどう考える?

 新人職員Aさんのケース

 入社して3か月の新人職員A が、ある日男性ご利用者を車椅子からベッドへ移乗しようとしたところ、誤ってフットサポートにぶつけてしまい、足の甲に内出血ができてしまった。

 1か月後、同様の場面で再びフットサポートにご利用者の足をぶつけてしまい、ケガを負わせてしまった。その後も、数か月に1度は同様の事故がくり返し起きている。

 この事例には、以下のようなことが考えられます。

  • 当事者の職員の技術だけの問題?
  • 新人職員を指導する先輩職員の問題?
  • 移乗のやり方に問題はない?
  • 人手不足だから仕方ない?
  • 同様の事故がくり返し起こっていることに問題意識はある?

 この事例は、Aさん一人の問題ではなく、職場全体の体制や環境に多くの要因が絡んでいることがわかります。

 不適切なケアを防ぐためには、教育、環境整備、コミュニケーションの強化が重要です。それぞれの要因を検討し、現場全体で改善に取り組むことが求められます。

不適切なケアが行われていないか?

 高齢者虐待につながる前段階では、不適切なケアが行われている可能性が高いと言われています。

 現場では、慣習的なケアや忙しさに追われる中で、無意識のうちに不適切なケアが行われている可能性があります。
 そのため、『これは本当に適切なケアなのか?』と立ち止まって考える時間が必要です。

 誰かが違和感を感じているケアは、不適切なケアの可能性があります。誰かが声に出し、共有してケアについて検討が必要です。

まとめ

 身体拘束と高齢者虐待について、事業所でどう考え、どう共有し、仕組みを作っていくのかが重要です。

 「身体拘束」はしてはいけない、「虐待」が起こってはならない。

 これは、皆さんが理解していると思います。

 しかし、個々の認識がズレていると無意識的に起きてしまう可能性があります。

 ぜひ、事業所の皆さんで「身体拘束」や「不適切なケア」について話し合う機会を作ってみてください。

 ひとりひとりの気づきが、拘束の廃止・虐待防止につながっていきます。組織としての「考え方」を整理して、共有していきましょう。

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