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皆さん、こんにちは。社会福祉士の石井雄樹です。
このブログでは、介護や福祉に携わる方に向けて、「短時間で好きな時間に分かりやすく学べる」をモットーに、研修内容や明日から使える介護・福祉に関する知識をご紹介していきます。
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- 勉強したいけど、時間や費用はかけたくない
このブログを活用していただければ、勉強したいと思っている介護・福祉従事者の方はもちろん、研修を担当している方にとっても役立つ内容を得ることができます。
今回の記事では、「介護事故防止のためのリスクマネジメント研修」の内容をご紹介していきます。
この記事で学べる内容はこちら↓
●介護事故に対する考え方
●介護事故の分類
●リスクを特定するポイント
●ヒヤリハット・事故報告書の活用
●情報共有と連携の重要性
介護現場の中で、介護事故のリスクは常に存在します。しかし、過度にリスクを恐れてしまうと行動抑制や身体拘束につながってしまう可能性があります。
この記事の内容を理解し、正しいリスクマネジメントが行えるように学んでいきましょう。
介護事故防止の基本的な考え方
まずは事故防止の基本的な考え方を学んでいきましょう。
事故防止に必要な視点として、以下の3つについて解説していきます。
- 高齢者の特徴を理解する
- 人はミスをする前提で考える
- 介護事故ゼロが生む「行動抑制」のリスク
考え方①高齢者の特徴を理解する
高齢者は、加齢による身体機能の低下や認知症などの症状を持つことが多いため、日常生活自体が常にリスクと隣り合わせです。
例えば、歩行中にバランスを崩しやすい、誤嚥しやすいなど、健康な成人と比べるとリスク要因が増える傾向にあります。
さらに、介護施設に入所されている方々は、身体的または精神的に障害を抱えている場合が多く、リスクがより高くなります。
例えば、施設内で転倒や誤薬が発生しやすい背景には、このような特性があることを理解する必要があります。
重要なのは、これらのリスクをゼロにすることが現実的ではないという点です。
高齢者が『その人らしく生活を送る』中では、どうしても回避できないリスクが存在します。私たちが目指すべきは、そのリスクを適切に管理し、ご利用者の安全と生活の質を両立させることです。
考え方②人はミスをする前提で考える
日常生活や介護の現場では、私たちがどれだけ注意を払っても、ミスや予期せぬ事態が完全にゼロになることはありません。そのため、ミスを前提にした考え方が重要になります。
まず、どれだけ気を付けていても、転倒や物の取り違えなどの小さな事故は避けられない場合があります。これは特に、高齢者や障害を抱えた方々と日々接する介護現場では頻繁に起こり得ることです。
重要なのは、『ミスをすることが悪い』と考えるのではなく、ミスの背景や原因を分析し、それを再発防止策に活かすという視点です。
例えば、ヒヤリハットの報告を通じて、『同じミスが他の職員でも起きないようにする』仕組みを整えることが求められます。
さらに、万が一ミスが発生しても、それが重大な事故に繋がらないような予防策を作ることが必要です。
例えば、転倒のリスクが高い場合は、床の状態を整える、見守り体制を強化するなど、事前の準備が大切です。
個人の注意力に頼るだけでは限界があります。組織全体で事故防止に向けた仕組みを構築することが、職員の負担軽減とご利用者の安全を両立させるために欠かせません。
考え方③介護事故ゼロが生む「行動抑制」のリスク
介護事故をゼロにしようとする気持ちはとても大切ですが、それを最優先にしすぎると、過剰な安全重視に繋がることがあります。
例えば、『転倒を防ぐために歩かせない』、『誤飲を防ぐために食事を制限する』といった対応です。
こうした行動抑制は、結果的にご利用者の身体機能や意欲を低下させるリスクを伴います。
ご利用者の安全を守ることはもちろん重要ですが、それと同時に、自立支援や尊厳を守ることも忘れてはなりません。
ご利用者が『その人らしい生活』を送れるよう支援することが、私たち介護職の役割です。安全だけに目を向けると、この大切な視点を見失ってしまうことがあります。
介護事故の分類
『介護事故』と『介護過誤』の違いについて解説します。
この2つを明確に理解することは、現場でのリスク管理や事故の振り返りを行う際にとても重要です。それでは、それぞれの特徴を見ていきましょう。
介護事故とは?
まず『介護事故』ですが、これは施設や職員に過失がない事故のことを指します。
例えば、予測できない突然の出来事や、一時的な状態変化によって発生するものです。
具体的には、『普段は安定して歩けているご利用者が、その日だけ体調不良で転倒してしまった』などが該当します。こういったケースは、リスクをゼロにすることが難しいため、すべてを防ぐのは現実的ではありません。
介護過誤とは?
次に『介護過誤』ですが、これは施設や職員に過失がある事故のことを指します。
特徴としては、以下の3つが挙げられます。
- 以前にも同様の事故があった場合
- 危険を予測できていたにも関わらず、対応を怠った場合
- ルールや手順を守らなかったことが原因の場合
「介護事故」と「介護過誤」には、明確な違いがあります。
介護事故の場合は、どのようにリスクを最小限に抑えるかを考える必要があります。
一方、介護過誤の場合は、ルールや手順を見直し、同じミスが再発しないよう対策を講じる必要があります。
リスクを特定するポイント
ポイント①リスクを特定するポイント(ご利用者)
『ご利用者』に焦点を当て、どのような観点からリスクを捉えるべきかについて具体的に説明します。
まず、身体機能や体調に関するリスクです。
ご利用者は、麻痺や視力・聴力の低下、筋力低下といった身体機能の変化が原因で、転倒や事故のリスクが高まることがあります。
また、発熱や食欲不振などの体調変化も、日常生活に影響を与える要因です。こうした身体の状態を日々観察し、把握することが基本となります。
次に、認知症に関連するリスクです。
認知症が進行している場合、行動や心理状態の変化が見られることがあります。
例えば、危険を予測する力が低下し、予期しない行動を取ることでリスクが生じる場合があります。ご利用者の理解度や心理状態を把握し、必要に応じて対応策を講じることが大切です。
最後に、習慣や意向に関するリスクです。
ご利用者が『いつも同じ時間にトイレに行く』や『仏壇にお参りする』などの習慣がある場合、それがリスク要因になることもあります。
また、『自分で歩きたい』『自分でトイレに行きたい』という意向も尊重しつつ、リスクを最小限にする工夫が必要です。
これら3つの視点でリスクを特定する際に大切なのは、『ご利用者一人ひとりの身体機能や体調を把握し、的確にアセスメントすること』です。
その上で、リスクに対する適切なケアや対応を行うことで、安全性と生活の質を両立させることが可能になります。
ポイント②リスクを特定するポイント(職員)
ご利用者の安全を守るためには、職員自身のリスクも適切に管理することが必要です。
まず、職員自身の体調についてです。
腰痛などの身体の痛みや、体調不良がある場合、介護業務が適切に行えないだけでなく、事故やケガのリスクが高まります。職員の体調不良時には、迅速に対応する方法を整備し、職場全体でサポートできる体制を作ることが大切です。
次に、ストレスについてです。
時間的な余裕がない状況や人手不足などは、心理的な負担を増加させます。
さらに、人間関係やコミュニケーションの問題も、ストレスの大きな要因となります。ストレスが蓄積すると、判断ミスや注意不足につながるため、定期的な面談や職場環境の改善が求められます。
最後に、技術と知識についてです。
職員が一定水準以上の介護技術や知識を習得することで、ご利用者への適切なケアが可能になります。
また、最新の情報を把握し、定期的な研修や訓練を行うことで、現場での質を高めることができます。技術や知識の不足は、事故やトラブルを引き起こす要因になるため、常に向上を目指す姿勢が大切です。
この3つの視点、つまり職員の体調、ストレス、技術と知識をバランスよく管理することで、安全で質の高い介護を提供できるようになります。
特に、職員が健康であることが、ご利用者の安全にもつながるという意識を持つことが重要です。
ポイント③リスクを特定するポイント(設備・環境)
ご利用者の安全を守るためには、設備や環境の整備が重要な役割を果たします。このスライドでは、設備や環境に焦点を当て、リスクを特定するための3つのポイントについて説明します。
最初に、住環境についてです。
段差や障害物など、転倒のリスクが高まる要因が施設内に存在することがあります。
これらのリスクを特定し、改善するためには、定期的な確認が必要です。例えば、廊下に物が置かれていないか、カーペットの端がめくれていないかといったチェックを日常的に行うことで、事故の発生を防ぐことができます。
次に、環境整備についてです。
ご利用者の状態や体調に合わせて、環境を柔軟に整えることが求められます。
例えば、体調の変化に応じてベッドの高さを調整したり、車椅子の通りやすい動線を確保することが挙げられます。また、変化に気づいたら迅速に対応する『スピード感』が、安全な環境を維持する鍵となります。
最後に、用具の選定についてです。
ご利用者の状態や体調に適した車椅子や歩行器を選ぶことで、移動時のリスクを軽減できます。
また、自助具を活用することで、ご利用者が自立して生活を送れるよう支援することも重要です。適切な用具の選定は、リスク回避だけでなく、ご利用者の尊厳を守ることにも繋がります。
ヒヤリハット・事故報告書の活用
次に、ヒヤリハットや事故報告の重要性についてお話しします。
これらの報告は、単なる記録ではなく、再発防止や安全意識を高めるための重要な役割を果たします。
以下の3つの視点について説明します。
- 報告書の重要性
- 報告書の必要性
- 適切な報告の重要性
①報告の重要性
まず、報告書の重要性についてです。
報告書は、重大事故の予兆を見逃さず、再発防止策を講じるために必要なものです。
事故やヒヤリハットが発生した場合、その背景を明らかにすることで、同じミスや事故が再び起こらないようにすることが目的です。報告書は、施設全体で学びを共有するための基盤となります。
②報告書の必要性
次に、報告書の必要性についてです。
報告書を全員で共有することで、小さな事故を大きな重大事故に発展させない仕組みを作ることができます。
全職員がリスクを理解し、対応策を共通認識として持つことで、施設全体の安全意識が向上します。特に、ヒヤリハットの段階で報告を徹底することが、未然防止に繋がります。
③適切な報告の重要性
最後に、適切な報告の重要性です。
報告は、具体的な状況や対応を速やかに記録し、共有することが求められます。
これにより、迅速に改善策を講じることが可能になります。曖昧な記録や記載漏れがあると、再発防止策の効果が薄れるため、正確で具体的な報告が重要です。
ハインリッヒの法則
ハインリッヒの法則では、『重大事故』は突然発生するのではなく、小さな問題やミスの積み重ねが原因で起きるとされています。
一番上の『1』は重大事故や災害を表し、その下に『29』の軽微な事故、さらにその下に『300』のヒヤリハットが存在しています。このように、多くのヒヤリハットや軽微な事故が潜在的なリスクとして蓄積し、最終的に重大事故に繋がるのです。
ここで重要なのは、『300のヒヤリハット』です。
ヒヤリハットは、『事故には至らなかったが、危険を感じた出来事』を指します。
この段階で適切に対応し、再発を防ぐことができれば、軽微な事故や重大事故を未然に防ぐことが可能になります。
つまり、ハインリッヒの法則は、『重大事故を防ぐためには、ヒヤリハットの段階で対策を講じることが重要である』ということを示しています。
ヒヤリハットの報告を怠ると、潜在的なリスクが見逃され、施設全体の安全が脅かされる可能性があります。報告されたヒヤリハットを活用して改善策を実施することで、安全意識の高い職場環境を作ることができます。
「活かせるヒヤリハット」と「活かせないヒヤリハット」事例
ヒヤリハット報告がどのように事故防止に役立つかについて、具体的な事例を見ていきます。
ここでは、認知症の症状があるご利用者Aさんに関するヒヤリハットのケースを取り上げ、適切な活用がどれほど重要かを考えていきましょう。
事例:認知症の症状があるご利用者Aさんが、椅子から立ち上がってトイレに向かおうとした際にバランスを崩し、転倒しそうになった。幸い近くにいた職員がすぐに支えて、転倒などの大きな事故にはならなかった。
活かせるヒヤリハット
ヒヤリハットを通じて根本的なリスクを特定し、対策を講じていることが重要です。
「Aさんが椅子から立ち上がる際、バランスを崩して転倒しそうになったが、近くにいた職員が支えて転倒を防いだ。要因として考えられるのは、Aさんはトイレを我慢する傾向があり、職員に声をかけずに急に立ち上がることが多い。椅子の高さがAさんの体格に合っておらず、立ち上がり時に力が必要な環境だった。この2点が考えられる。対応策として、Aさんの体型に合わせた座りやすく立ち上がりやすい椅子を準備する、Aさんがトイレに行きたがるタイミングを職員が定期的に確認し、事前に声をかける、職員間でAさんの現在の状態や特性・リスクなどを共有する」
他のご利用者にも応用可能な対策となり、施設全体の安全性向上に繋がります。ここでは、先ほどの事例を基に、どのようにヒヤリハットを活かしていくかを3つのポイントで解説します。
- 事実の記録:まず、ヒヤリハットとして事実を記録することが基本です。
この事例では、『Aさんが椅子から立ち上がる際、バランスを崩して転倒しそうになったが、職員が支えて防いだ』という事実が記録されています。この記録が、振り返りと改善策の出発点になります。 - 背景の分析:次に、事象の背景を分析します。Aさんの場合、トイレを我慢する傾向があり、職員に声をかけずに急に立ち上がることが多いという特性がありました。
また、使用していた椅子の高さがAさんの体格に合っておらず、立ち上がる際に必要以上の力を要する環境だったことも問題でした。このように、なぜそのヒヤリハットが起きたのかを深掘りすることで、具体的な改善策を考えることができます。 - 提案する対応策:1.最後に、具体的な対応策です。この事例では、以下の3つが提案されています。
1.Aさんの体型に合わせた座りやすく立ち上がりやすい椅子を準備する
2.Aさんがトイレに行きたがるタイミングを職員が定期的に確認し、事前に声をかける
3.職員間でAさんの現在の状態や特性、リスクなどを共有する
これらの対策を実施することで、同じようなヒヤリハットを未然に防ぐことが可能になります。
活かせないヒヤリハット
「Aさんが椅子から立ち上がろうとして転倒しそうになったが、職員が支えて防いだ。Aさんは急に立ち上がることがあり危険である。今後の対応として、Aさんの動きを注意深く見守る。動いたことがわかるように、椅子に鈴を付けることとする。」
では、このヒヤリハットがなぜ活かすことができない内容なのかを解説します。
- 事実の記録:単なる出来事の記録にとどまっています。
- 背景の分析:次に、この事例での背景の分析です。記録には『Aさんは急に立ち上がるため危険である』と記されていますが、原因の深掘りが十分に行われていません。なぜAさんが急に立ち上がったのか、日常的なパターンや環境要因の確認が欠けています。このように背景を詳細に分析しないと、次に何をすべきかが曖昧になってしまいます。
- 提案する対応策:対応策「Aさんの動きを注意して見守る」「動いたことが分かるように、椅子に鈴を付ける」
これらの対応策は一見すると具体的ですが、実際には問題を根本的に解決するものではありません。
見守りは職員の負担が大きく、鈴を付けるだけではAさんが転倒する可能性を完全には排除できません。つまり、これらは場当たり的な対応策と言えます。
介護事故防止のための取り組み
介護事故防止のためには、以下の3つのポイントが重要になります。
- 情報共有の徹底
- 多職種の連携
- 情報共有と多職種連携の効果的な組み合わせ
これらをそれぞれ解説します。
情報共有の徹底
まず、情報共有の重要性についてです。事故防止には、正確で迅速な情報共有が欠かせません。
情報が共有されない場合、リスクが見過ごされ、事故やトラブルに繋がる可能性があります。例えば、ご利用者の状態や環境の変化が他の職員に伝わらないと、適切な対応が遅れる危険性があります。
情報共有の徹底は、介護現場における事故防止の基盤です。職員全員が同じ情報を共有することで、リスクを予測し、適切な対応を取ることが可能になります。
多職種の連携
介護現場における事故防止を効果的に行うには、多職種連携が非常に重要な役割を果たします。
多職種連携は、それぞれの専門性を活かしてリスクに対応する仕組みです。例えば、看護師が健康状態を把握し、リハビリ職員が運動能力を評価し、介護職員が日常生活の支援を行うことで、総合的なリスク管理が可能になります。
このように、各職種が持つ視点や専門知識を共有することで、ご利用者に最適なケアを提供できるようになります。
多職種連携は、事故防止だけでなく、ご利用者へのケアの質を高める鍵でもあります。専門性を活かした連携は、職員の業務効率化にも繋がります。
情報共有と多職種連携の効果的な組み合わせ
介護現場での事故防止には、情報共有と多職種連携の組み合わせが鍵となります。
情報共有と多職種連携は、それぞれ単体でも重要ですが、組み合わせることで相乗効果が生まれます。これにより、組織全体で事故防止に取り組む体制が強化され、ご利用者にも職員にも安心できる環境が提供されます。
まとめ
本日の内容をまとめます。
- 介護事故防止に関する基本的な考え方
リスクをゼロにすることを目指すのではなく、未然防止や適切な対応によって事故を最小限に抑えることが重要です。事故の発生を完全に防ぐことは難しいですが、リスクを認識し対策を講じることで、被害を抑える努力が求められます。
介護事故の分類
介護事故と介護過誤の区別です。介護事故は予測や回避が難しいケースもありますが、介護過誤は事前の対応や適切な判断で防ぐことが可能です。この違いをしっかり理解し、それぞれに応じた対応策を明確にすることが必要です。
リスクを特定するポイント
リスクの特定においては、『ご利用者』『職員』『設備・環境』という3つの視点が大切です。それぞれの視点からリスクを洗い出し、具体的な対策を検討することで、安全な環境を実現できます。
ヒヤリハット・事故報告書の活用
ヒヤリハットや事故報告は、再発防止や業務改善に直結します。
小さなヒヤリハットの共有を積極的に行うことで、大きな事故を未然に防ぐことが可能になります。日々の記録や報告が、職員全体の安全意識を高める鍵となります。
5.情報共有と連携の重要性
最後に、情報共有と多職種連携の重要性です。日々の申し送りや会議、多職種間の連携を通じて、リスクに関する情報を迅速かつ正確に共有することで、全員が同じ目標に向かって取り組むことができます。
ここで学んだ内容を基に、日々の業務でリスクを意識し、ご利用者の安全を確保する努力を続けていきましょう。