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皆さん、こんにちは。福祉施設の研修講師「いし~ちゃん」です。
このブログでは、介護や福祉に携わる方に向けて、「短時間で好きな時間に分かりやすく学べる」をモットーに、研修内容や明日から使える介護・福祉に関する知識をご紹介していきます。
- 研修に使える資料がほしい
- 研修のポイントを知りたい
- パワーポイントに使える資料が欲しい
- 勉強したいけど、時間や費用はかけたくない
このブログを活用していただければ、勉強したいと思っている介護・福祉従事者の方はもちろん、研修を担当している方にとっても役立つ内容を得ることができます。
今回の記事では、「介護事故の発生または再発防止に関する研修」の内容をご紹介していきます。
介護事故の発生または再発防止に関する研修のポイント
この研修で押さえておくべきポイントは以下の通りです。
- 介護事故を完全にゼロにすることはできない
- 介護事故の分類
- 介護事故発生防止のためのプロセス
- 事故防止に必要なこと
介護事故防止のためのリスクマネジメント
介護現場における介護事故防止のためのリスクマネジメントは、事故のリスクを事前に把握し、事故防止のためのリスクや対応策を共有し、管理していくため必要な取り組みです。
リスクマネジメントの目的
介護現場におけるリスクマネジメントの目的としては、以下の3つがあげられます。
- ご利用者(入所者)の安全・安心な暮らしの実現
- 職員が安心して働ける環境づくり
- 組織・事業所のリスクマネジメント
ひとつずつ解説していきますので、介護事故のリスクマネジメントを職員ひとりひとりが理解しておくようにしておきましょう。
リスクマネジメントの目的①:ご利用者の安全・安心な暮らしの実現
ご利用者の安全と安心を確保し、サービスをご利用いただくために、リスクマネジメントは必要です。
ご利用者は、何かしらの障害や病気を抱えられている方が多く、一般的な高齢者に比べて、事故が起こりやすい状態にある方々です。そのため、その生活は常にリスクと隣り合わせです。
事故を未然に防ぎ、ご利用者がその人らしく生活をしていくためには、リスクマネジメントは重要となります。
リスクマネジメントの目的②:職員が安心して働ける環境づくり
現場の介護職員は、ご利用者のリスクを常に意識しながら業務を行わなければなりません。また、介護事故が起きてしまうと、精神的ストレスを感じてしまう職員も少なくないでしょう。
事故発生の要因の中には、施設の環境面の不備や職員の人員不足、配置ミスなども含まれることがあります。
適切なリスクマネジメントを行うことで、施設内の環境を整えることができ、職員が安心して仕事をすることができるようになります。
リスクマネジメントの目的③:組織・事業所のリスクマネジメント
介護事故の中でも、骨折や死亡といった大きな事故は、組織や事業所にも大きなダメージを与えることがあります。
事故の状況によっては、十分にリスクマネジメントが行われなかったことにより、苦情や訴訟になるケースもあります。そうなると、組織や事業所の信頼失墜やイメージダウンにつながり、その後の施設経営に影響を及ぼす可能性があります。
施設の健全な運営のために、リスクマネジメントは重要です。
介護事故防止の考え方
介護事故防止は、ご利用者の生活を守りながら、適切なリスクマネジメントを実施していくことが求められます。
ここでポイントとなるのが「ご利用者の生活を守りながら」ということです。
介護事故を防ごうとするあまり、全てのリスクを回避しようとすると、過度な行動抑制につながる可能性があります。
自分でさせない、できるだけやらない選択が増えてしまうことになります
「起こさない」「歩かせない」「見守る(見張る)」「制止する」といった介護になってしまいます。
過度な行動抑制は、身体拘束にもつながる可能性もあるため注意が必要です。
介護事故の分類
介護事故は大きく分けると、次の2つに分類されます。
- 介護事故
- 介護過誤
それぞれの内容について解説していきます。
介護事故とは
介護事故とは、施設側に過失が認められない事故になります。
- 突発的な原因(日頃は問題ない、この日だけ偶然に)により起こった事故
- 普段の様子から予測することができなかった事故
例えば下記のようなケースです。
普段からご自分で歩行され、歩行状態も安定している。この日、トイレに行くときに足がもつれてしまい、廊下で転倒してしまった。
いつもと変わらないご様子で、歩行状態が安定しており、ご本人もご家族も介護職員も共通の認識のもとで対応していた中で起こった事故です。
このようなケースは、介護事故となります。
介護過誤とは
介護過誤とは、施設側に過失がある事故になります。
- 以前にも同様の事故があった
- 危険を予測(感じて)していたが、対策をしなかった
- 対策や再発防止策が講じられていたにも関わらず、実行していなかった
例えば下記のようなケースです。
いつもは歩行されているが、今日は朝から発熱しており、体調も悪そうであった。普段からご自分で歩いて食堂に出てこられるため、いつも通りの対応をしていたが、お部屋から出たところでふらつきがあり、そのまま転倒してしまった。
体調不良であることに気づき、いつもより調子が悪いことを把握していたにも関わらず、何も対策をせずいつも通りの対応を行った結果、起こってしまった事故です。
このようなケースは、介護過誤となります。
対策をすれば防げる事故を確実に防いでいくことが重要になります。
介護事故防止のためのリスクマネジメントの取り組み
介護事故が起こる要因は様々です。ご利用者の状態や環境面、職員体制など複数の要因が関係し、引き起こされます。
介護事故は、個人が注視して防げるものではありません。
そのため、組織としてリスクマネジメントに取り組み、介護事故防止に取り組んでいく必要があります。
リスクマネジメントの取り組み①:リスクの発見・把握
まずは、リスクの発見と把握が必要になります。
例えば、先ほどの介護過誤の事例であれば、「発熱して体調が悪い」「いつも通りに歩くのは難しいかも」「いつもより様子を細かく観察した方が良いだろうか」などと、リスクを予測し対策することで防げる可能性が高まったかもしれません。
リスクの発見・把握のポイント
〇リスクの発見・把握では、「防げる事故」なのか「防ぐことが難しい」のかを見極めることが重要。
〇避けられない事故があることを理解しつつ、「防げる事故」のためにリスクの発見・把握に努め、リスクの軽減に取り組んでいくことが必要。
また、日頃の業務の中で上がってくる「ヒヤリハット報告」も参考になります。
事故に至らないまでも、事故が起こる可能性があった事象が「ヒヤリハット報告」です。
ハインリッヒの法則
ヒヤリ・ハットとは、事故に至らなかったが、事故に直結してもおかしくない「ミス」や「冷やり」「ハッ」としたことを指します。
1件の大きな事故の裏には29件の軽微な事故、そして300件のヒヤリハットがあるとされており、ヒヤリ・ハットを把握することがリスクマネジメントにおいて重要になります。
リスクマネジメントの取り組み②:事故事例の分析
リスクを発見・把握できたら、その特定されたリスクについて分析していきます。
この分析には、次の4つのフレームワークを使用すると効果的です。
- 人的要因
- 設備要因
- 環境要因
- 管理的要因
事故事例の分析:人的要因
人的要因とは、以下のような内容になります。
- 心理的要因:忘却(ど忘れ)、考え事、無意識行動、危険感覚のずれ、憶測判断、思い付きの行動など
- 生理的要因:疲労、睡眠不足、アルコール、疾病、加齢など
- 職場的要因:人間関係、リーダーシップ、チームワーク、コミュニケーション
事故事例の分析:設備要因
設備要因とは、以下のような内容になります。
- 設備の欠陥や不良:水たまりができてしまうなど
- 危険防護不良:防護カバーなどの不備
- 人間工学的配慮不足:どうしても足が引っかかってしまう
- 点検整備不良:点検ができておらず、ブレーキ動作が効かない
事故事例の分析:環境要因
環境要因とは、以下のような内容になります。
- 情報不足:利用者の身体状況が申し送られていなかった
- 介護方法不適切:利用者に適した福祉用具ではなかった
- 作業空間や環境不良:狭い場所や暗い場所での介護
事故事例の分析:管理的要因
管理的要因とは、以下のような内容になります。
- 規程・マニュアル不備
- 教育・研修などが不充分
- 適正配置不十分
- 健康管理不足
リスクマネジメントの取り組み③:リスクへの対策
事故の要因を分析したら、具体的なリスクへの対応策を検討していきます。
対応する内容は、事故の場所や種類などによって異なります。それらの内容や手順を事故対応マニュアル等にきちんと落とし込むことが必要になります。
そして事故を未然に防止するための対策や事故発生時の被害を最小限にするために、リスク管理のシステム化を行いましょう。
- 事故発生時の対応
- マニュアル整備
- 安全対策委員会等の定期的な開催や事故発生時の会議の開催
- 事故内容や対策の職場内での迅速な情報共有のシステム作り
その際は、内容が具体的なものになるように注意しましょう。
例えば、「職員が注意して行う」や「可能な限り見守りを行う」といった内容では、職員によって認識に差異が出てしまいます。
また、安易な身体拘束や行動抑制につながるような対策は避けるべきです。
ご利用者が安心してサービスを受けることができ、職員が安全に配慮しながら働きやすい環境を作ることが重要です。
介護事故防止のリスクマネジメントまとめ
ご利用者が安心・安全に生活していくために、介護事故のリスクマネジメントは重要です。
しかし、安全を守るために過度な行動抑制をしたり、安易な身体拘束をしたりすることは厳禁です。
事故防止を徹底していくためには、リスクの把握と要因分析、それに対応したマニュアルの整備などが必要です。
ご利用者はもちろん、職員も安心できる環境づくりを行っていきましょう。