『自分の変え方』に学ぶ|介護職が変わりたいのに変われない理由と、職員・組織を変える5つの方法

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『自分の変え方』に学ぶ|介護職が変わりたいのに変われない理由と、職員・組織を変える5つの方法

「今の自分を変えたいけれど、なかなか行動できない」

「もっと成長したいと思っているのに、毎日同じ仕事を繰り返している」

「何度指導しても、職員の行動が変わらない」

「業務改善が必要なのに、現場がなかなか動かない」

介護現場で働いていると、このような悩みを感じることがあります。

介護の仕事は、経験を積むことで知識や技術が身につく一方、慣れた方法を繰り返しやすい仕事でもあります。

そのため、今の仕事のやり方に課題を感じていても、なかなか変えられないことがあります。

私自身、特別養護老人ホームの生活相談員として、職員育成や研修、業務改善、生産性向上などに関わってきました。

その中で感じるのは、人は必要性を理解したからといって、必ずしも行動を変えるわけではないということです。

今回紹介するのは、村岡大樹氏の『自分の変え方 認知科学コーチングで新しい自分に会いに行く』です。

本書では、人が変化を避ける理由や、普段の習慣・思い込みを見直し、新しい行動につなげる方法が紹介されています。

この記事では、本書の考え方を分かりやすく整理しながら、介護職自身の成長、職員育成、業務改善、組織のマネジメントに活かす方法を解説します。

この記事で分かること

  • 人が変わりたいのに変われない理由
  • 『自分の変え方』の要約と重要ポイント
  • 介護職が自分の行動を変えるための具体的な方法
  • 何度指導しても変わらない職員への対応
  • 介護現場の業務改善を実行・定着させる方法

『自分の変え方』とは?本の要約と重要ポイント

『自分の変え方』は、自分の行動や考え方を見直し、望む未来に向けて変化していく方法を紹介した書籍です。

本書では、認知科学コーチングの考え方をもとに、自己理解、目標設定、決断、行動の重要性が説明されています。

特に注目したいのは、単に「努力すれば変われる」「やる気を出せば行動できる」という話ではないことです。

なぜ人は変化を避けるのか。

なぜ同じ行動を繰り返すのか。

どうすれば新しい行動を始め、続けられるのか。

こうした疑問について考えることができます。

① 人は慣れた環境や行動を変えにくい

本書で紹介されているのが、ホメオスタシスという考え方です。

ホメオスタシスとは、もともと体温など身体の状態を一定に保とうとする生理的な仕組みを指します。

本書では、この考え方を、慣れた環境や行動から抜け出しにくいことの説明にも用いています。

例えば、毎日運動しようと決めても、いつの間にか以前の生活に戻ってしまう。

新しい勉強を始めても、数日でやめてしまう。

仕事のやり方を変えようとしても、結局いつもの方法を選んでしまう。

こうした経験は、多くの人にあるのではないでしょうか。

もちろん、人間の心理的な現状維持を、生理的なホメオスタシスだけで説明できるわけではありません。

しかし、慣れた行動を変えることの難しさを理解するうえでは、参考になる考え方です。

重要なのは、変わりたいという気持ちだけでは、長年続けてきた習慣は簡単に変わらないということです。

② 私たちの行動には無意識の習慣が影響している

私たちは、日々の行動をすべて意識的に決めているわけではありません。

例えば、朝起きてからの行動、通勤経路、仕事の進め方など、普段から繰り返していることは、あまり深く考えずに実行できる場合があります。

本書では、こうした無意識の習慣や思い込みが、行動や意思決定に影響していることが説明されています。

介護現場でも同じです。

長年同じ方法で介助を行っている職員は、その方法が当たり前になっているかもしれません。

研修で新しい方法を学んでも、普段の業務では以前のやり方に戻ってしまうことがあります。

つまり、知識を増やすことと、日常の行動を変えることは別の問題なのです。

なお、本書の解説では「意思決定の95%が無意識」という数字も紹介されていますが、あらゆる意思決定について科学的に確定した割合ではありません。

ここでは、人の行動には本人が十分に意識していない習慣や判断が影響するという点を押さえておきましょう。

③ 自分を変えるには、まず自分の行動を理解する

本書では、自分を変えるための第一歩として、自己理解の重要性が紹介されています。

特に参考になるのが、次の3つの視点です。

  • 自分が無意識に避けていること
  • 誰かに止められても、ついやってしまうこと
  • これまでうまくいったときに共通していた行動

例えば、「自分は勉強が苦手だ」と考えている人でも、興味のある分野については自然と調べているかもしれません。

反対に、「人前で話すのが苦手」と感じている人は、発表する機会を無意識に避けている可能性があります。

大切なのは、自分がどういう人間だと思っているかだけでなく、実際にどのような行動を取っているかを確認することです。

④ 今の自分を変える必要がある目標を設定する

本書では、今の自分の延長線上では達成できないようなゴールを設定することが重要だと説明されています。

例えば、介護職として「今より少し仕事ができるようになりたい」という目標も悪くありません。

しかし、それだけでは何を変えればよいのか曖昧です。

「認知症ケアについて学び、職員に説明できるようになる」

「事故報告を分析し、再発防止策を提案できるようになる」

「チームの課題を整理し、業務改善を進められるようになる」

このように目指す姿を具体化すると、今の自分に何が不足しているのか、どのような行動が必要なのかが見えてきます。

ただし、目標は高ければよいというものではありません。

自分が目指したいと思えること、そして必要な行動を具体的に考えられることが重要です。

⑤ 変化するためには、具体的な行動を決める

本書で特に重要だと感じたのは、目標を設定した後の行動についてです。

どれだけ理想を語っても、実際の行動が変わらなければ、現状は変わりません。

そのため、本書では何を始めるのか、何をやめるのか、いつ実行するのかを決めることが紹介されています。

例えば、「勉強を頑張る」ではなく、「毎週月曜日と木曜日に30分、認知症ケアについて学ぶ」と決める。

「業務改善を進める」ではなく、「今月中に業務の現状を確認し、翌月の会議で改善案を検討する」と決める。

目標を行動に変えるためには、実施内容と期限を明確にすることが必要です。


介護職が変わりたいのに変われない4つの理由

本書の考え方を介護現場に置き換えると、職員自身の成長や業務改善が進まない背景には、いくつかの共通した課題があると考えられます。

① 今までのやり方に慣れている

介護現場では、長年続けてきた方法が、そのまま標準的な業務として定着していることがあります。

「以前からこの方法だった」

「先輩からこう教わった」

「特に問題が起きていない」

こうした理由で、現在の方法を続けている場合もあるでしょう。

もちろん、経験によって培われた方法には価値があります。

しかし、慣れていることと、適切であることは同じではありません。

ご利用者の状態や職員体制、制度、業務環境が変化しているのであれば、仕事のやり方も見直す必要があります。

② 何を変えればよいのか分かっていない

「もっと成長したい」

「仕事ができるようになりたい」

「チームを良くしたい」

こうした目標は大切ですが、具体性が不足しています。

例えば、「仕事ができるようになりたい」と考えているのであれば、どの業務について、どのような能力を身につけたいのかを明確にする必要があります。

介護技術なのか。

記録や報告なのか。

ご家族への対応なのか。

後輩職員への指導なのか。

課題が明確になれば、必要な学習や経験も考えやすくなります。

③ 失敗や周囲の反応を恐れている

新しいことに挑戦すると、失敗する可能性があります。

また、今までと違う行動を取ることで、周囲から否定的な反応を受ける場合もあります。

例えば、業務改善を提案したときに、「今のままでいい」「余計な仕事を増やさないでほしい」と言われることもあるでしょう。

そうした経験が重なると、新しい提案を控えるようになるかもしれません。

ただし、変化への慎重さをすべて消極性や意欲不足として扱うべきではありません。

実際の業務負担や安全面の懸念がある場合もあります。

大切なのは、何を不安に感じているのかを具体的に確認することです。

④ 目標はあるが、実行する仕組みがない

私は、介護現場で特に多いのがこの問題ではないかと感じています。

「情報共有を徹底する」

「職員の意識を高める」

「多職種連携を強化する」

会議や研修では、こうした目標がよく掲げられます。

しかし、実際に誰が何をするのかが決まっていなければ、行動にはつながりません。

目標を達成するためには、担当者、実施方法、期限、確認方法まで明確にする必要があります。

行動が変わらない原因を、職員の意欲だけに求めないことが重要です。


『自分の変え方』を介護現場で活かす5つの方法【具体例付き】

① 介護職自身の成長|自分の得意・不得意を行動から理解する

介護職として成長するためには、自分の特徴を理解することが大切です。

例えば、認知症ケアについて調べることが好きな職員がいたとします。

一方で、大勢の前で発表することには苦手意識があるかもしれません。

この場合、「発表が苦手だから研修講師には向いていない」と決めつける必要はありません。

まずは少人数の勉強会で説明することから始める。

資料作成を担当し、他の職員と協力して発表する。

このように、得意なことを活かしながら、新しい経験を積む方法も考えられます。

実践のポイント

自分が自然と取り組んでいること、避けていること、うまくいった経験を振り返り、次の成長目標を考えましょう。

② 職員育成|「何度言っても変わらない」を具体的な課題にする

職員指導の場面では、「何度説明してもできない」という悩みを耳にすることがあります。

しかし、同じ説明を繰り返すだけでは、改善しない場合があります。

例えば、介護記録に必要な情報が不足している職員がいたとします。

その職員は、何を記録する必要があるのか理解していないのでしょうか。

観察する視点が不足しているのでしょうか。

それとも、観察した内容を文章にまとめることが苦手なのでしょうか。

原因によって、必要な指導は異なります。

記録の目的を説明する。

具体的な記録例を示す。

実際の記録を一緒に振り返る。

チェック項目を設ける。

このように、必要な行動を具体化することで、育成につなげやすくなります。

もちろん、職員本人にも学び、必要な能力を身につける責任があります。

しかし、指導する側も、単に「できない職員」と評価するのではなく、何が不足しているのかを整理する必要があります。

実践のポイント

「何度言ってもできない」ではなく、「どの行動ができていないのか」「何を身につければよいのか」を明確にしましょう。

③ 介護研修|学んだ知識を日常業務の行動に変える

研修は、職員が新しい知識や考え方を学ぶ重要な機会です。

しかし、研修を受けただけで現場が変わるとは限りません。

例えば、認知症ケアの研修で、ご利用者の言動の背景を理解する重要性を学んだとします。

その後、現場では何を変えるのでしょうか。

「不穏」という言葉だけで記録しない。

ご利用者が何を話し、どのような行動を取ったのかを具体的に記録する。

その言動が見られた時間帯や周囲の環境を確認する。

必要に応じて多職種で対応方法を検討する。

こうした行動に置き換えることで、研修内容が実践につながります。

私は、研修の成果を考えるときには、参加人数や理解度だけでなく、実際の行動が変わったかどうかも重要だと考えています。

実践のポイント

研修後に「明日から何を変えるのか」を一つ決め、一定期間後に実践状況を振り返りましょう。

④ 業務改善|「忙しい」を具体的な改善課題に変える

介護現場では、「忙しい」「人が足りない」という言葉がよく使われます。

もちろん、実際に人員が不足している場合もあります。

しかし、「忙しい」という言葉だけでは、何を改善すべきなのか判断できません。

例えば、夕方の業務が忙しい場合です。

食事の準備、排泄介助、記録、申し送りなどが同じ時間帯に集中しているのかもしれません。

特定の職員に業務が偏っている可能性もあります。

あるいは、必要性が低くなった業務を、以前と同じ方法で続けている場合もあるでしょう。

そこで必要になるのが、現状の把握です。

私は、業務改善の取り組みとして、タイムスタディなどによる業務の見える化を重視しています。

何に、どの程度の時間を使っているのか。

どの時間帯に業務が集中しているのか。

どのような業務の重複や待ち時間があるのか。

こうした情報を整理することで、改善の方向性を検討できます。

ただし、タイムスタディは一つの手段です。

目的に合った別の方法で現状を把握できるのであれば、それでも構いません。

重要なのは、「忙しい」という感覚を、具体的に検討できる課題に変えることです。

実践のポイント

感覚だけで業務改善を進めず、事実やデータを確認し、改善すべき業務を明確にしましょう。

⑤ リーダー・管理職|職員の意欲ではなく、実行できる仕組みをつくる

本書の考え方は、介護現場のリーダーや管理職にも役立ちます。

例えば、新しい取り組みが進まないとき、「職員の意識が低い」「現場が変化を嫌がる」と考えてしまうことがあります。

しかし、それだけが原因とは限りません。

目的が共有されていない。

担当者が決まっていない。

実施期限が曖昧になっている。

必要な判断が先送りされている。

このような組織上の問題がある場合、職員個人の意識を変えるだけでは改善しません。

私は、現場を統括する立場の重要な仕事は、必要な業務が安定して実行される仕組みをつくることだと考えています。

職員の話を聞き、必要な情報を集めることは重要です。

しかし、全員が納得するまで判断を先送りすることが、必ずしも適切とは限りません。

安全性や業務負担などの懸念を確認したうえで、組織として必要な判断を行うことも管理者の役割です。

実践のポイント

「職員が動かない」で終わらせず、目的・担当者・期限・判断基準・進捗確認の仕組みが整っているかを確認しましょう。


介護現場で行動を変えるための4ステップ

ここまでの内容を、実際に活用しやすい形に整理します。

STEP1|今の行動を振り返る

まずは、変えたい行動や課題を具体的にします。

例えば、「報告が苦手」という場合、どのような場面で報告できていないのかを確認します。

STEP2|目指す状態を明確にする

次に、どのような状態になりたいのかを考えます。

「報告を頑張る」ではなく、「状態変化があった際に、必要な情報を整理して担当者へ報告できる」といった具体的な目標にします。

STEP3|実行する行動と期限を決める

目標を達成するために、何をするのかを決めます。

例えば、「来週から、状態変化を報告するときは、確認した事実・実施した対応・相談したい内容を整理して伝える」といった行動です。

STEP4|実践結果を振り返り、方法を修正する

実行した後は、できたことと改善が必要なことを確認します。

うまくいかなかった場合は、本人の努力不足と決めつけず、方法や環境に問題がなかったかも確認します。

ステップ考えること介護現場での例
① 現状把握何ができていないか報告に必要な情報が不足している
② 目標設定どうなりたいか事実と対応を整理して報告できる
③ 行動決定何を、いつするか来週から報告項目を統一する
④ 振り返り実践できたか2週間後に報告内容を確認する

大切なのは、目標を立てて終わらず、実行と振り返りを繰り返すことです。


介護職の成長や職員育成に関するよくある質問

Q.介護職として成長したいのですが、何から始めればよいですか?

まずは、自分が得意なこと、苦手なこと、今後身につけたい能力を整理しましょう。

そのうえで、具体的な目標を一つ設定することをおすすめします。

例えば、認知症ケアについて学びたいのであれば、関連する書籍や研修で学び、実際の支援にどう活かすかを考えることが重要です。

Q.何度指導しても変わらない職員には、どう対応すればよいですか?

まず、何ができていないのかを具体的に確認する必要があります。

知識や技術の不足なのか、業務手順の問題なのか、本人の行動上の課題なのかによって対応は異なります。

必要な指導や支援を行い、改善状況を確認しましょう。

それでも改善が見られない場合は、役割や配置、組織としての対応を検討する必要があります。

Q.介護職のモチベーションを高めれば、行動は変わりますか?

モチベーションが行動のきっかけになることはあります。

しかし、意欲が高まっただけで、必要な行動が継続するとは限りません。

行動を変えるためには、具体的な目標や手順、実践しやすい環境、振り返りの機会なども重要です。

Q.業務改善に反対する職員がいる場合、どうすればよいですか?

まずは、反対している理由を具体的に確認しましょう。

安全面への懸念なのか、業務負担への不安なのか、目的が理解できていないのかによって、必要な対応は異なります。

そのうえで、組織として実施すべき取り組みであれば、必要な調整と判断を行い、実行につなげることが重要です。

Q.職員研修を実施しても現場が変わらないのはなぜですか?

研修で学んだ知識が、具体的な業務行動に置き換えられていない可能性があります。

研修後に何を実践するのかを明確にし、一定期間後に実践状況を確認することが大切です。

また、職員個人の努力だけでなく、現場の手順やルールを見直す必要がある場合もあります。


まとめ|介護現場で変化を生み出すには、考え方だけでなく行動と仕組みを変えることが重要

『自分の変え方』から学べるのは、人が変わるためには、これまでの習慣や思い込みを理解し、新しい目標に向けて行動する必要があるということです。

介護現場でも、同じことが言えるのではないでしょうか。

「もっと成長したい」

「職員に変わってほしい」

「業務を改善したい」

こうした思いは、変化のきっかけになります。

しかし、思っているだけでは現状は変わりません。

何を変えたいのか。

どのような状態を目指すのか。

そのために、何を実行するのか。

そして、実行した結果をどう確認するのか。

そこまで具体的にすることが重要です。

私自身、介護現場で職員育成や業務改善に関わる中で、変化を生み出すことの難しさを感じてきました。

だからこそ、個人のやる気や努力だけに依存するのではなく、必要な行動が継続される仕組みをつくることを大切にしています。

もちろん、人が変わることは簡単ではありません。

しかし、変化が難しいことと、変化しなくてよいことは別です。

自分自身の成長も、職員育成も、組織の業務改善も、まずは現状を理解し、具体的な行動を始めることが必要です。

変わりたいと思うだけでは変われない。何を変えるのかを決め、実際に行動することから変化は始まるのです。


参考書籍

『自分の変え方 認知科学コーチングで新しい自分に会いに行く』

著者:村岡大樹

※本記事は、書籍の内容をもとに、介護現場での経験や職員育成・業務改善への応用について筆者の視点から考察したものです。書籍の主張と筆者の実践的な解釈は区別して記載しています。

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